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アスベスト調査分析会社の選び方

アスベスト調査分析会社は日本に数百社あると言われています。会社によって、調査の制度は異なってきます。アスベスト調査分析にあたって、必ず資格が必要と定められているわけれはないので、資格を有しなくとも調査を行うことはできます。ただ、周囲への飛散や見落とし、労働者への安全を考えると、アスベストに関する資格を保有する会社への依頼をおすすめします。

■アスベスト調査の流れ

① 図面調査(第一次スクリーニング)

事前調査にあたっては、書面による調査を行います。書面調査では、図面などの書面や聞き取りから情報をできる限り入手し(発注者や過去の経緯をよく知る施設管理者や工事業者等の関係者に対するヒアリング等により情報を入手する)、それらの情報からできる限り多く、石綿の使用の有無に関係する情報を読み取り(工事概要や建築物等に関する情報のほか、建築物等に使用されている個々の建材を把握するとともに、得られた情報から石綿含有の有無の仮判定を行う)、現地での目視による調査を効率的・効果的に実施できるよう準備を行います。書面調査は、調査対象建築物に係る情報を理解・把握することにより、現地での目視調査の効率性を高めるとともに、石綿含有建材の把握漏れ防止につながるなど、調査の質も高めるものであり、重要な工程となります。これらの質と効率を高めるには、建築や建材などの知識が重要となります。

② 現場調査(第二次スクリーニング)

設計図書や竣工図等の書面は石綿含有建材の使用状況に関する情報を網羅しているものではなく、また、必ずしも建築物の現状を現したものとは限らないことから、書面調査の結果を以て調査を終了せず、石綿の使用状況を網羅的に把握するため、原則として現地で目視調査を行うことが必要とされています。 例えば、仕様を満たすため現場判断で設計図書と異なる施工をした場合や、設計図書には残っていない改修が行われている場合があり、書面調査はあくまで下調べに過ぎず、相違があれば、 当然、現地での目視調査の結果が優先されます。 目視調査では、次のような点がポイントとなります。

(1) 内装のほか下地等の内側等の外観からでは直接確認できない部分を含め、建材の使用箇所(各部屋・各部位等)に漏れがないようにします。

・各部屋のほか、パイプスペース、煙突、改修により遮断された空間、エレベーター昇 降路 等(各部屋の網羅)

・床、幅木、腰壁、垂れ壁、天井、懐などに加えて、取り合い部、金属パネル裏打ち、 配管貫通部 等(各部位の網羅)

(2) 建材等の種類や石綿含有の有無等を判断する、又は石綿含有とみなす。

・建材等の種類等を判断する(例:ロックウールかグラスウールか)

・同一と考えられる建材の範囲を判断する(例:改修の有無)

・建材の商品等を特定する(裏面の表示等の情報を読み取る)

・建材の石綿含有の有無を判断する(特定した商品等と、データベースや団体・メーカ ー等の石綿含有情報と照合する)

※書面調査で特定した商品等と同じであれば、改めて判断することは不要

(3) これら建材の種類や石綿含有の有無・不明の根拠等を記載し、調査結果の現場メモを作成します。

ただし、以下の建築物等を解体等する場合には、書面調査で工事着手日を確認することで、石綿含有建材が使用されていないと判断することができます。

③ 試料採取・分析

分析を行うこととなった建材の試料採取については、目的とする分析対象を採取できるよう同一材料と判断される建築材料ごとに、代表試料を選定し、採取しなければなりません。一般に分析は、分析対象の代表性と変動性(均一性)を考慮したものとすべきであり、建材の石綿分析においては、具体的には、ⅰ現地での目視調査において同一と考えられる範囲を適切に判断し、試料採取において建材にムラがあることを考慮しなければならりません。 例えば、吹付け材であれば、色違いの部分や複数回吹付けがなされた場合は、 それぞれの施工部位を別の建材と判断する必要があります。吹付け材の場合であれば、試料採取は該当する吹付け面積を3等分し、各区分から1個ずつサンプルを採取します。 試料採取箇所の判断を適切に行う観点から、石綿に関し一定の知識を有し、的確な判断ができる者が採取箇所の判断を行う必要があります。

また、分析については、大防法及び石綿則において、石綿含有の有無が不明な場合は分析を行うことが義務づけられています(石綿含有ありとみなす場合を除く)。 分析方法は、日本工業規格(JIS)A 1481 規格群をベースとし、その実施に当たっては、厚生労働省の「石綿則に基づく事前調査のアスベスト分析マニュアル」の記載内容を優先する必要が ある点に留意します。 これに基づく石綿分析の流れは、次のとおりとなります。まず、建材中の石綿の含有の有無を調べるための定性分析を行います。定性分析で石綿が含有していると判定された場合は、含有率を調査するための定量分析を行い、建材中の石綿の含有率(0.1%以下か否か)を確定させます ただし、定性分析で石綿ありと判定された場合において、定量分析を行わずに、石綿が 0.1%を 超えているとして扱うことも可能です。なお、吹付け材については、ばく露防止措置を講ずる 際の参考とするための含有率を調査するための定量分析を行うことが望ましいです。

④報告書の作成

事前調査を行う業者は、書面調査、目視調査時の現場メモをもとに、事前調査の記録を作成します(みなしや分析を行った場合にはその結果を含む)。 その後、その記録をもとにして事前調査の報告書を受注者が責任者となりとりまとめ、大防法に基づき、発注者に書面で報告することとされています。 また、調査業者が受注者とは別の場合は、調査業者は、発注者、除去業者及び解体業者に対し て、実際の現場において事前調査を行った範囲や内容について説明をする場を設けることが望ましいです。

■アスベスト調査費用の相場

① 事前調査の費用

図面調査:1現場あたり20,000円~30,000円

現場調査:1現場あたり20,000円~60,000円

② 分析の費用

分散染色分析法:1検体あたり30,000円~55,000円

X線回折分析法:1検体あたり30,000円~55,000円

分散染色分析法+X線回折分析法:1検体あたり40,000円~100,000円

業者によって検査方法や料金設定は異なるため、複数の業者に見積もりを依頼することをおすすめします。

■アスベストに関する資格例

1. 社団法人日本作業環境測定協会Aランク又はBランク認定分析技術者

厚生労働省の通達、基発0423第7号で、石綿則第3条第2項に規定する分析による事前調査は、公益社団法人日本作業環境測定協会が実施する「石綿分析技術の評価事業(石綿分析に係るクロスチェック事業)」により認定されるAランク又はBランクの認定分析技術者などが行う事となっています。

石綿分析に係るクロスチェック事業は、濃度が分からないサンプルの分析値が正確かテストする事業です。

2. 作業環境測定機関(都道府県労働局長又は厚生労働大臣による登録)

公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)9章1節 アスベスト含有建材の除去工事で、『アスベスト粉じん濃度測定機関は、都道府県労働局に登録されている作業環境測定機関とする。』となっております。

3. 建築物石綿含有建材調査者

国土交通省の建築物石綿調査補助事業では「建築物石綿含有建材調査者」による調査が義務付けられ、また、除去の補助事業では工事計画に石綿調査者が関与することが義務付けられました。 「建築物石綿含有建材調査者」による調査でなければ、補助金が出ないことがあります。

■事前調査に関連する制度・仕組みについて(厚生労働省)

(1)労働安全衛生法関連 (ア 労働安全衛生法等 ① 労働安全衛生法)

労働安全衛生法においては、耐火建築物又は準耐火建築物で石綿等が吹き付けられているものにおける石綿等の除去の作業を行う仕事については労働安全衛生法第 88 条第 3 項に基づく計画の届出を、また、それ以外の建築物等で石綿等が吹き付けられている建築物等の解体等の作業、石綿等が使用されている保温材、耐火被覆材、断熱 材が張り付けられた建築物等の解体等の作業、吹き付け石綿等の封じ込め又は囲い込みの作業については石綿障害予防規則第 5 条に基づく作業の届出を行わなければならないとされている。 石綿障害予防規則では、事前調査の実施に関し以下を規定している(第3条)。

・ 事業者は、建築物、工作物又は船舶の解体等の作業、石綿等の封じ込め又は囲い込みの作業を行うときは、あらかじめ、当該建築物、工作物又は船舶について、 石綿等(労働安全衛生法施行令第 6 条において、「石綿若しくは石綿をその重量の 0.1 パーセントを超えて含有する製剤その他の物」と定義されている)の使用の有無を目視、設計図書等により調査し、その結果を記録しておかなければならない。

・ 事業者は、前項の調査を行ったにもかかわらず、当該建築物、工作物又は船舶について石綿等の使用の有無が明らかとならなかったときは、石綿等の使用の有無 を分析により調査し、その結果を記録しておかなければならない。ただし、当該 建築物、工作物又は船舶について石綿等が吹き付けられていないことが明らかで ある場合において、事業者が、当該建築物、工作物又は船舶について石綿等が使用されているものとみなして労働安全衛生法及びこれに基づく命令に規定する 措置を講ずるときは、この限りでない。

・ 事業者は、建築物、工作物又は船舶の解体等の作業、石綿等の封じ込め又は囲い込みの作業を行う作業場には、調査を終了した年月日並びに調査の方法及び結果の概要を、作業に従事する労働者が見やすい箇所に掲示しなければならない。また、労働安全衛生法第 28 条第1項の規定に基づき定められた「建築物等の解体等 の作業及び労働者が石綿にばく露するおそれがある建築物等における業務での労働者の石綿ばく露防止に関する技術上の指針(平成 26 年3月 31 日)」では、事前調査の実 2 施に関し、以下等を規定している。

 ・ 目視、設計図書等による事前調査は、石綿に関し一定の知見を有し、的確な判断 ができる者が行うこと

 ・ 分析による事前調査は、十分な経験及び必要な能力を有する者が行うこと。

また、厚生労働省の「労働安全衛生法第 28 条第 1 項の規定に基づく技術上の指針に関する 公示」(平成 26 年3月 31 日)において示された「建築物等の解体等の作業及び労働者 が石綿等にばく露するおそれがある建築物等における業務での労働者の石綿ばく露防止に関する技術上の指針」では、事前調査を実施する者の要件について、以下のよう に示している。

 <目視、設計図書等による調査>

・ 「石綿に関し一定の知見を有し、的確な判断ができる者」には、「建築物石綿含有建材調査者講習登録規程」(平成 25 年 7 月 30 日公示)により国土交通省に登録された機関が行う講習を修了した建築物石綿含有建材調査者、石綿作業主任者技能講習修了者のうち石綿等の除去等の作業の経験を有する者及び日本アスベ スト調査診断協会に登録された者が含まれること。

 <分析による調査>

 ・ 「十分な経験及び必要な能力を有する者」には、「公益社団法人日本作業環境測定協会が実施する「石綿分析技術の評価事業(石綿分析に係るクロスチェック事業)」により認定される A ランク又は B ランクの認定分析技術者、一般社団法人 日本環境測定分析協会が実施する「アスベスト偏光顕微鏡実技研修修了者」や「アスベスト偏光顕微鏡インストラクター」があること。

■アスベスト調査を行う者について

「石綿飛散漏洩防止対策徹底マニュアル[2.20 版]」(平成 30 年 3 月厚生労働省)では、事前調査を実施する者の要件について、以下を示している。

 <目視、設計図書等による調査>

・ 石綿作業主任者は、事前調査に特化した講習を受講したものではないことから、 事前調査に関する講習を受講するなど一定の知識を有することが望まれる。

・ 石綿作業主任者の有するべき「経験」については、建築物や建材には様々な種類があることから、解体等を行おうとする建築物に応じた経験を有するべきである。

・ 調査を行う者の資格の種類等にかかわらず、いずれの者であっても、事前調査の経験の浅い間は経験者の監督の下で調査を行ったり、ダブルチェックを行うことが望まれる。

・ 建築物や石綿含有建材は多様である。調査を行う者は、現地調査では建築の知識のみに頼ってはならない一方で、石綿建材の見落としが生じないよう、建築の知識の習得に努めるなど、自らの資質向上に不断に取り組むべきである。

 <分析による調査>

・ できるだけ、(公社)日本作業環境測定協会の石綿分析技術評価事業の A ランクの分析技術者が在籍する分析機関を選定することが望ましい。

・ (一社)日本環境測定分析協会の技能試験の合格者や合格試験所が望ましい。

労働安全衛生法に基づく石綿作業主任者は、本来、解体等工事における現場管理や排気装置の点検など、実際の解体作業に関わる内容を職務としており、必ずしも事前調査に必要な知識等を有しているとは限らないことから、厚生労働省では、事前調査の精度底上げを目的として、平成 29 年度に、石綿作業主任者を対象とした講習会を実施している。